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鑑定業法・登録・税務読了 約8

最低手数料500万円は小さな鑑定事務所に合うのか?中小M&Aガイドライン第3版で読む「仲介契約前に確認すべき8項目」

中小M&Aガイドライン第3版(令和6年8月・中小企業庁)は、仲介者に対して手数料の算定基準・料率表・最低手数料・両手の有無などを契約前に書面で説明することを求めています。鑑定会社オーナーが仲介契約前に確認すべき8項目と、一般的な最低報酬相場(500万〜2,500万円)が小規模事務所に合わない問題を整理します。

「仲介会社に相談したら、最低報酬が1,000万円と言われた。うちの事務所の売却価格より高い」。鑑定事務所のオーナーから伺う、最も切実な声の一つです。譲渡価額が数百万円から数千万円の小規模事務所にとって、一般的なM&A仲介の手数料体系はそもそも設計が合っていません。

一方で、仲介契約は一度結ぶと簡単には抜けられません。専任条項や直接取引の禁止など、後から効いてくる条項が多いためです。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン」は、まさにこの問題意識から、仲介者に対して契約前の説明義務を求めています。ここでは、ガイドライン第3版をもとに、鑑定会社オーナーが仲介契約を結ぶ前に確認すべき8項目を、不動産鑑定士の視点で整理します。

中小M&Aガイドライン第3版とは何か

中小M&Aガイドラインは、中小企業庁が策定したM&Aの手引きで、令和6年8月に第3版に改訂されました。売り手・買い手である中小企業向けの指針であると同時に、仲介者・FA(フィナンシャル・アドバイザー=売り手または買い手の一方のみに助言する立場)に対する行動指針を含んでいます。

仲介者に求められる「契約前の書面説明」

仲介者・FAは、契約前に手数料の算定基準・料率表・最低手数料・相手方からの手数料受領の有無・担当者の資格や実績等を書面で説明することが求められ、利益相反の類型が明示されています(要旨)。

中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月

法律ではなく指針ですが、支援機関として登録している仲介者にはガイドラインの遵守が求められます。つまり、契約前に説明を求めるのはあなたの正当な権利であり、説明を渋る仲介者はそれ自体が判断材料になります。

鑑定士だからこそ読み解ける「利益相反」

鑑定評価では、依頼者との利害関係がある場合に独立性が問われます。私たち鑑定士は利益相反の構造に敏感な職業です。M&A仲介における利益相反は、仲介者が売り手・買い手の双方から手数料を受け取る「両手仲介」の構造に由来します。売り手には高く、買い手には安くという相反する利害の間に立つため、ガイドラインは両手であることの開示と、利益相反となり得る事項の説明を求めています。鑑定士としての視点で言えば、両手仲介そのものが悪なのではなく、「両手であることを隠す」ことが問題です。

仲介契約前に確認すべき8項目

ガイドラインが求める説明事項を、鑑定会社オーナーの目線で8項目に整理します。契約書とあわせて、書面での回答を求めてください。

手数料に関する4項目(1〜4)

1. 手数料の算定基準(何を基準に計算するか)

レーマン方式(譲渡価額などの基準額に対して、金額帯ごとに異なる料率を掛けて手数料を算出する方式)が一般的ですが、基準額が「株式の譲渡対価」なのか「総資産」なのか「企業価値(負債を含む)」なのかで金額が大きく変わります。総資産や移動総資産を基準にする方式では、役員借入金などの負債も算定基礎に含まれ、譲渡価額が小さくても手数料が膨らみます。鑑定会社は負債が小さいことが多いため、株式の譲渡対価を基準にする方式(株価レーマン)のほうが実態に合いやすいと当社は考えています。

2. 料率表(金額帯ごとの料率)

料率は金額帯ごとに段階的に下がるのが一般的ですが、上限の料率や刻みは仲介者によって異なります。料率表そのものを書面で受け取り、想定される譲渡価額に当てはめた金額を試算してもらってください。

3. 最低手数料

小規模な鑑定事務所にとって最も重要な項目です。一般的なM&A仲介の最低報酬は500万〜2,500万円程度とされています。譲渡価額が1,000万円の事務所で最低報酬が1,000万円なら、売り手の手取りはゼロです。最低手数料が譲渡価額の見込みに対して現実的かどうかを、契約前に必ず確認してください。

4. 両手の有無(相手方からの手数料受領)

売り手・買い手の双方から受領する仲介か、一方のみから受領するFAか。両手仲介であれば、その旨と利益相反の可能性について説明を受けてください。両手であること自体は否定されませんが、開示がないのは問題です。

契約条項と担当者に関する4項目(5〜8)

5. 専任条項

特定の仲介者以外への相談や依頼を禁じる条項です。ガイドラインは専任条項について、期間を限定することや、他の支援機関へのセカンドオピニオンを妨げないことなどの目安を示しています。契約期間が長すぎる、解除条件が不明確、といった専任条項は避けるべきです。

6. 直接取引禁止条項(テール条項)

仲介契約の終了後も、仲介者が紹介した相手と直接取引した場合には手数料を支払う、という条項です。一定期間の直接取引禁止は合理性がありますが、期間が長すぎたり対象が「紹介した相手」に限定されていなかったりする場合は交渉の余地があります。ガイドラインでもテール条項の期間や対象の目安が示されているため、原文と照らし合わせてください。

7. 契約期間と中途解除

契約期間、自動更新の有無、中途解除の条件と解除時の費用負担を確認します。着手金や中間金がある場合、解除時に返金されるかどうかも重要です。

8. 担当者の資格・実績

ガイドライン第3版は、担当者の資格や実績等の説明を求めています。鑑定会社のM&Aでは、鑑定業者登録の承継や専任鑑定士の要件、公的評価の承継可否といった業界固有の論点があるため、担当者が鑑定業界を理解しているかが成否を左右します。

契約書は弁護士に

専任条項・テール条項・中途解除などの契約条項は、後から効いてくる法律上の論点です。仲介契約書は締結前に弁護士にご確認ください。手数料の税務上の扱い(譲渡費用への算入など)は税理士にご確認ください。売却時の課税の枠組みは 鑑定会社売却の税金 で整理しています。

最低報酬相場が小規模事務所に合わない問題

鑑定業界の構造を見ると、この問題の深刻さが分かります。不動産鑑定業者は3,398業者(令和7年1月1日現在、大臣登録・知事登録の計。出典: 国土交通省「不動産の鑑定評価に係る登録状況」)で、その大半が鑑定士1〜3名の小規模事務所です。鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は令和6年に4,496名で、平成23年の5,057名から約11%減少しており、知事登録業者所属は▲13%と地方部の減少が顕著です(出典: 国土交通省「業務領域の拡大等を通じた不動産鑑定士の担い手確保に向けて〜論点整理〜」令和7年3月24日)。

「売れる価格」より「手数料」が高い構造

士業事務所のM&Aでは年買法(純資産+営業利益の1〜3年分)が実務上よく使われ、純資産が小さい士業事務所では実質的に営業利益の1〜3年分+αで語られることが多い、というのが一般論です。営業利益が300万円の事務所なら、譲渡価額の目安は数百万円から1,000万円程度のレンジになります。この規模に最低報酬500万〜2,500万円を当てはめると、手数料が譲渡価額を上回る事態が普通に起こります。

その結果、小規模事務所は「仲介会社に相手にされない」か「手数料倒れになる」かの二択に追い込まれ、結局は廃業を選ぶケースが多いと私たちは考えています。廃業と売却の比較は 廃業と売却、どちらが得か で整理しています。

当社の手数料体系(透明性の一例として)

当社はガイドラインの趣旨に沿い、契約前に以下を開示しています。

譲渡価額成功報酬(税別)
2,000万円以下一律150万円(最低報酬)
2,000万円超〜1億円以下7%
1億円超〜5億円以下5%
5億円超3%
  • 算定基準: 譲渡価額(株式譲渡なら株式の譲渡対価、事業譲渡なら事業の譲渡対価)。役員借入金等の負債は算定基礎に含めない株価レーマン方式
  • 相談無料・着手金0円・中間金0円の完全成功報酬
  • 売り手・買い手の双方から受領する仲介(両手)であることを事前に開示

最低報酬を150万円に設定しているのは、譲渡価額が数百万円から2,000万円の小規模事務所でも手取りが残る水準にするためです。詳細は 手数料 に料率表と算定例を掲載しています。これが唯一の正解というつもりはありませんが、「契約前に全て開示する」という形の一例として参考にしていただければ幸いです。

仲介者を比較する際の実務的なコツ

想定譲渡価額で手数料を試算させる

料率表だけを見ても比較はできません。「譲渡価額が800万円の場合」「3,000万円の場合」といった具体的な金額で、各仲介者に手数料を試算してもらい、手取りベースで比較してください。価格の目安は 企業価値・売却相場 の簡易シミュレーターで把握できます。

セカンドオピニオンを取る

ガイドラインは、他の支援機関へのセカンドオピニオンを妨げないことを求めています。契約前であれば、複数の仲介者に同じ質問をぶつけて回答を比較するのが最も確実です。当社の初回相談は無料ですので、比較の一つとしてご利用いただいて構いません。M&A全体の進め方は 鑑定会社M&Aの全体像 をご覧ください。

まとめ

中小M&Aガイドライン第3版は、仲介者に対して契約前の書面説明を求めています。鑑定会社オーナーが確認すべき8項目は次のとおりです。

  • 手数料の算定基準・料率表・最低手数料(特に最低手数料が譲渡価額の見込みに対して現実的か)
  • 両手の有無と利益相反の説明
  • 専任条項・テール条項・契約期間と中途解除の条件
  • 担当者の資格・実績(鑑定業界の理解があるか)

一般的な最低報酬相場(500万〜2,500万円)は小規模な鑑定事務所には合いません。手数料倒れを理由に廃業を選ぶ前に、手数料体系を比較してください。当社は不動産鑑定士が直接担当し、手数料を契約前に全て開示しています。オーナー鑑定士様、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。無料相談はこちら。売却をご検討の方は 売却をご検討の方へ、よくある質問は FAQ をご覧ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する助言ではありません。記載の価格・相場は目安であり、実際の譲渡価額は個別の交渉により決まります。税務・法務の具体的な判断は、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
吉田 健人

執筆者

吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士

外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。

不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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