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鑑定会社M&Aの基礎読了 約7

不動産鑑定会社のM&Aは何から始めればいいのか?売却・買収・事業承継の全体像を鑑定士が整理する完全ガイド

不動産鑑定会社のM&Aを、業界データ、株式譲渡・事業譲渡・有資格者承継という3つの形、売り手と買い手それぞれの流れ、鑑定業者登録・専任鑑定士・公的評価・属人性という鑑定会社特有の論点、手数料の考え方まで一本で整理します。売却でも買収でも、最初に読む記事としてお使いください。

「鑑定事務所に買い手などつくのか」「うちは私1人の事務所だから、閉めるしかない」「売るといっても、地価公示や固定資産税評価はどうなるのか」。不動産鑑定会社のオーナーから、私たちはこうした声を繰り返し伺います。

結論から言えば、鑑定会社のM&Aは十分に成立します。ただし、一般の会社のM&Aとは違う論点が4つあり、そこを押さえずに進めると登録や公的評価で足元をすくわれます。この記事では、不動産鑑定士である私たちが、鑑定会社のM&Aの全体像を売り手・買い手の両方の目線で整理します。

なぜ今、不動産鑑定会社のM&Aなのか

数字が示す担い手の減少

国土交通省の登録状況によれば、令和7年1月1日現在の不動産鑑定士は8,789人、不動産鑑定士補は1,187人、不動産鑑定業者は大臣登録・知事登録を合わせて3,398業者です。

一方、鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は令和6年に4,496名で、平成23年の5,057名から561名・約11%減りました。大臣登録業者の所属者が990名(▲3.4%)にとどまるのに対し、知事登録業者の所属者は3,506名(▲13%)と、地方の減少が際立ちます。年齢構成も令和5年時点で40〜60歳代が74%を占め、30歳代以下は7%にすぎません。

鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は平成23年の5,057名から令和6年の4,496名へ約11%減少し、30歳代以下の割合は平成15年の25%から令和5年には7%まで低下している。
国土交通省 地価調査課「業務領域の拡大等を通じた不動産鑑定士の担い手確保に向けて〜論点整理〜」(令和7年3月24日)

つまり、引退期を迎えるオーナー鑑定士は増えるのに、事務所を引き継ぐ若手は減っている。これが「廃業か、承継か」という選択を多くの事務所に迫る背景です。業界データの詳しい読み方は「不動産鑑定業界の高齢化をデータで読む」にまとめています。

廃業ではなく承継という選択肢

廃業すれば、顧客との関係も職員の雇用も、あなたが数十年かけて積み上げた評価の蓄積も消えます。M&Aによる承継であれば、それらを次の担い手に渡したうえで、あなたは対価を受け取って引退できます。後継者不在の悩みは「事業承継・後継者不在のご相談」でも扱っています。

鑑定会社のM&Aには3つの形がある

株式譲渡

法人の株式を買い手に譲渡し、会社ごと引き継いでもらう形です。法人格が続くため、鑑定業者登録、顧客との契約、職員の雇用、事務所の賃貸借はそのまま維持されます。手続がシンプルで、鑑定会社のM&Aでは第一候補になることが多い形です。

事業譲渡

会社の中の「鑑定事業」だけを切り出し、資産・契約・職員を買い手に個別に移す形です。個人事業の鑑定事務所には株式がないため、承継は必然的にこの形になります。後述のとおり、鑑定業者登録は承継されない点が最大の注意点です。

有資格者承継

勤務鑑定士や独立を志す鑑定士に、事業譲渡や株式譲渡で事務所を引き継ぐ形です。買い手が法人ではなく個人の鑑定士である点が特徴で、地方の1人事務所ではこの形が現実的な選択肢になります。想定されるケースとして、地方都市で地価公示評価員と固定資産税評価を受託する70代の代表が、独立希望の40代勤務鑑定士へ事業譲渡し、旧代表が2年間並走する、という形が考えられます。

登録契約・雇用向いている事務所
株式譲渡維持(変更届出は必要)自動的に継続法人で職員がいる
事業譲渡承継されない個別に移転個人事業、一部事業のみ売却
有資格者承継手法による手法による地方の1人事務所

どちらを選ぶかの判断軸は「株式譲渡と事業譲渡の違い」で詳しく解説しています。

売り手と買い手、それぞれの流れ

売り手の流れ

  1. 無料相談で、売却か承継か廃業かの方向性を整理する
  2. 決算書・受託状況をもとに価値の目安を把握する(企業価値・売却相場
  3. ノンネームシート(社名を伏せた匿名の概要書)を作成し、買い手候補に打診する
  4. 秘密保持契約を結んだうえで企業概要書を開示し、トップ面談を行う
  5. 基本合意書を締結し、買い手によるデューデリジェンス(財務・法務・業務の実態調査)を受ける
  6. 最終契約を締結し、株式や事業を引き渡す
  7. 一定期間、旧代表が並走して顧客・公的評価を引き継ぐ

相談から成約までの期間は案件によりますが、鑑定会社では公的評価の年度サイクルに合わせて引継ぎ時期を決めることが多く、半年から1年半程度を見ておくのが現実的です。詳しくは「M&Aの流れ」と「売却をお考えの方へ」をご覧ください。

買い手の流れ

買い手の流れは売り手の裏返しですが、鑑定会社を買う場合は「誰が専任の鑑定士になるのか」「公的評価は本当に引き継げるのか」を早い段階で確認することが要です。拠点拡大を狙う鑑定会社、鑑定機能を持ちたい不動産会社や士業法人は「買収ニーズ登録」からご相談ください。

鑑定会社特有の4つの論点

論点1:鑑定業者登録の継続

株式譲渡なら法人格が続くため登録は維持されます(役員・専任鑑定士等の変更届出は必要)。事業譲渡や吸収合併で譲渡側の法人が消滅する場合、登録は買い手に承継されず、買い手側で新規登録または事務所追加の手続が必要です。登録の空白期間があると鑑定業務ができないため、クロージング日と登録手続の順序を最初に設計します。

論点2:専任の不動産鑑定士

不動産鑑定業者は事務所ごとに専任の不動産鑑定士を置かなければなりません(第35条)。要件を欠いた場合は2週間以内に是正措置が必要です。裏を返せば、買い手が鑑定士でなくても、専任の鑑定士を置けば登録は可能です。想定されるケースとして、首都圏の不動産会社が鑑定士2名の法人を株式譲渡で取得する場合、鑑定士2名の残留が最重要条件になります。

論点3:公的評価の承継

地価公示の鑑定評価員は個人として委嘱され、会社には紐づきません。固定資産税評価は自治体との契約、競売評価人は裁判所の選任です。いずれも自動的には移らず、承継可否は個別に確認が必要です。「公的評価の売上がそのまま買い手に移る」と思い込んで価格を決めると、後で必ず揉めます。

論点4:属人性

鑑定会社の売上は代表個人の信用に依存しがちです。買い手はそこを最も警戒するため、売り手側で属人性を下げておくほど評価は上がります。「引退3年前から始める売却準備」で具体策を整理しています。

注意

不動産会社が鑑定会社を子会社化した場合、グループ内案件の受任には独立性の観点から注意が必要です。受任範囲の設計は事前に整理しておきましょう。

手数料の考え方

一般的なM&A仲介の最低報酬は500万〜2,500万円程度とされ、売上数千万円規模の鑑定事務所には使いにくいのが実情です。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」は、仲介者に対し、契約前に手数料の算定基準・料率表・最低手数料・相手方からの手数料受領の有無などを書面で説明することを求めています。

当社は相談無料・着手金0円の完全成功報酬で、譲渡価額2,000万円以下は一律150万円、2,000万円超〜1億円は7%、1億円超〜5億円は5%、5億円超は3%(いずれも税別)を、売り手・買い手の双方からいただきます。料率の詳細と利益相反への考え方は「手数料」で公開しています。価格の目安については「鑑定会社の売却相場と年買法」をご覧ください。

税務・法務について

M&Aに伴う税額や適用可否は税理士に、契約の法的効果は弁護士にご確認ください。

まとめ

  • 担い手不足を背景に、鑑定会社にも「廃業ではなく承継」という選択肢が現実味を帯びています
  • M&Aの形は株式譲渡・事業譲渡・有資格者承継の3つで、登録の扱いが大きく異なります
  • 鑑定会社特有の論点は、登録の継続、専任鑑定士、公的評価の承継、属人性の4つです
  • 手数料は契約前に書面で確認するのが原則です

引退を考え始めたオーナー鑑定士の方、拠点拡大や鑑定機能の獲得を検討する法人の方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。無料相談はこちら

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する助言ではありません。記載の価格・相場は目安であり、実際の譲渡価額は個別の交渉により決まります。税務・法務の具体的な判断は、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
吉田 健人

執筆者

吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士

外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。

不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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