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鑑定業法・登録・税務読了 約8

鑑定業者登録はM&Aでどうなる?第22条・第35条・第29条から読む承継手続と「登録の空白」を作らない段取り

不動産鑑定業者の登録はM&Aで引き継げるのか。株式譲渡では法人格が続くため登録は維持され変更届で足りる一方、事業譲渡・合併では買い手側の新規登録または事務所追加と廃業届が必要です。第22条・第35条・第29条を引用しつつ、大臣登録と知事登録の違い、登録の空白期間を作らない段取り、専任鑑定士の配置を整理します。

「会社を譲ったら、鑑定業者の登録はそのまま買い手に移るのか」「事業譲渡の場合、登録が切れて鑑定評価書を出せない期間ができるのではないか」。鑑定業者登録は、私たち鑑定士が鑑定評価を業として行うための根拠であり、登録が途切れれば1日たりとも業務ができません。M&Aの検討で真っ先に確認すべき論点です。

結論は明快です。株式譲渡なら法人格が続くため登録は維持され、変更の届出で足ります。事業譲渡や吸収合併で譲渡側の法人が消滅する場合は登録は承継されず、買い手側で新規登録または事務所追加の手続を行い、譲渡側は廃業等の届出を出します。ここでは条文の要旨を確認しながら、手法別の手続と、登録の空白を作らない段取りを不動産鑑定士の視点で整理します。

鑑定業者登録の基本を条文で確認する

M&Aの手続を考える前に、登録制度の3つの柱を押さえます。

第22条: 登録がなければ鑑定業は営めない

登録は「法人」または「個人」という事業主体に対して行われます。ここがM&Aでの承継可否を決める出発点です。法人格が続く限り登録は続き、法人格が消えれば登録も消えます。

第35条: 事務所ごとに専任の不動産鑑定士

買い手が鑑定士でなくても、事務所ごとに専任の鑑定士を置けば登録は可能です。逆に言えば、M&Aで鑑定士が離職して専任者がいなくなれば、2週間以内に是正しなければなりません。

第29条: 廃業・合併による消滅は30日以内に届出

事業譲渡で鑑定業をやめる場合や、吸収合併で消滅する場合は、この届出が必要です。

M&Aの手法別に見る登録の扱い

手法によって、登録が「続く」のか「消える」のかが決まります。手法の選び方そのものは 株式譲渡と事業譲渡の違い で解説していますので、ここでは登録面に絞ります。

株式譲渡: 登録は継続、変更の届出が必要

株式譲渡は、株主が変わるだけで法人格は同じです。したがって鑑定業者登録はそのまま維持されます。ただし、役員(代表取締役・取締役)の交代、専任の不動産鑑定士の変更、商号や事務所所在地の変更などがあれば、変更の届出が必要です。譲渡日(クロージング)の直後に役員変更の登記と登録行政庁への届出を一連の手続として組み込みます。

事業譲渡: 買い手側で新規登録または事務所追加

事業譲渡は、鑑定業という「事業」を売り手法人から切り出して買い手に移す手法です。登録は売り手法人に紐づいたまま移らないため、買い手側の手続が必要になります。

  • 買い手がまだ鑑定業者でない場合: 新規登録。買い手が専任の鑑定士を確保した上で登録申請を行い、登録が完了してから事業を受け入れます
  • 買い手がすでに鑑定業者の場合: 承継する事務所を追加する変更の届出。ただし追加事務所が別の都道府県にある場合は、次項の大臣登録への切替が必要になることがあります

売り手側は、事業譲渡後に鑑定業を営まないのであれば廃業の届出を行います(第29条)。個人の鑑定業者(個人事業)には株式がないため、承継の手法はこの事業譲渡に限られます。個人事務所特有の論点は 個人事務所の売却 をご覧ください。

合併: 消滅会社は廃業等の届出、存続会社は登録の確認

吸収合併では消滅会社の登録は失われ、消滅の日から30日以内に届出が必要です(第29条)。存続会社が鑑定業者であれば、消滅会社の事務所を存続会社の事務所として追加する変更の届出を行います。存続会社が鑑定業者でなければ、合併の効力発生前に新規登録を済ませておかなければ、合併と同時に無登録の状態になります。

大臣登録と知事登録の違いがM&Aで効く場面

第22条のとおり、事務所が1都道府県内なら知事登録、2以上の都道府県にまたがれば大臣登録です。M&Aでは、この区分の切替が発生することがあります。

別の都道府県の事務所を承継すると「登録替え」が必要

たとえば東京都で知事登録を受けている鑑定会社が、事業譲渡で神奈川県の事務所を承継すると、事務所が2都県にまたがるため大臣登録を受け直す必要があります。逆に、大臣登録の会社が事務所を閉じて1都道府県だけになれば知事登録への切替対象です。登録替えには申請から登録完了まで一定の期間がかかるため、譲渡スケジュールに登録替えの期間を織り込むことが欠かせません。

株式譲渡なら登録区分は変わらない

株式譲渡では買い手が売り手法人を子会社として保有するだけなので、売り手法人の登録区分はそのままです。買い手グループ内に大臣登録と知事登録の法人が並存しても問題はありません。登録面の手続を軽くしたい場合、株式譲渡が選ばれやすい理由の一つです。

登録の有効期間にも注意

鑑定業者登録には有効期間があり、更新手続が必要です。売り手法人の更新時期が譲渡直後に来る場合、更新手続を誰が行うかを事前に決めておきます。M&Aの手続と更新が重なると書類の準備が煩雑になるため、スケジュールの調整をおすすめします。

登録の空白を作らない段取りと専任鑑定士の配置

事業譲渡・合併で最も避けるべきは、「売り手の登録は廃業届で消えたが、買い手の登録がまだ下りていない」という空白です。この期間は鑑定評価を業として行えず、受任中の案件も止まります。そして、手続を正しく踏んでも、専任の不動産鑑定士がいなければ登録は維持できません。段取りと人の要件はセットで設計します。

基本の順序は「買い手の登録完了 → 譲渡実行 → 売り手の廃業届」

  1. 基本合意の段階で、買い手側の登録手続(新規登録・事務所追加・登録替え)の要否を確定する
  2. 買い手が専任の不動産鑑定士を確保し、登録申請または変更の届出を行う
  3. 買い手の登録完了を確認してから、譲渡日(クロージング)を迎える
  4. 受任中の案件は、譲渡日前後で依頼者の同意を得て買い手に契約上の地位を移す
  5. 売り手は譲渡日から30日以内に廃業等の届出を行う(第29条)

登録申請から完了までの標準処理期間は登録行政庁によって異なります。基本合意から譲渡実行までの期間は、登録手続に必要な期間を確認した上で設定してください。なお、譲渡日をまたぐ案件は鑑定評価書の署名者と発行主体が変わるため、依頼者に事前説明し、契約の引き継ぎに同意を得るのが原則です。金融機関や自治体は発注先の変更に社内手続が必要な場合があるため、早めの連絡が必要です。

鑑定士の残留が登録の生命線

M&Aでは、専任の不動産鑑定士という「人」の要件が最も脆弱です。

想定されるケース

首都圏の不動産会社が、鑑定士2名の法人を株式譲渡で取得するケース。買い手に鑑定士はいないため、専任鑑定士要件(第35条)を満たすには売り手側の鑑定士2名の残留が最重要条件になります。残留を担保する雇用契約と処遇、鑑定士が離職した場合の対応(後任確保の期限や、譲渡対価の調整)を契約に織り込む設計が考えられます。あわせて、グループ内案件の受任ルールなど鑑定評価の独立性に関する社内規程も整備します。

買い手が鑑定士でない場合の論点は 非鑑定士による買収と専任鑑定士 で詳しく解説しています。

複数事務所を承継する場合は事務所ごとに確認

第35条の要件は「事務所ごと」です。売り手が本店と支店を持っている場合、支店にも専任の鑑定士が必要です。支店の専任者が譲渡を機に退職すると、その事務所は2週間以内に是正が必要になります。事務所ごとに専任者の残留意思を確認し、確保できない事務所は譲渡前に閉鎖する(または統合する)判断も選択肢です。

登録手続の詳細について

本記事は法律の条文要旨と一般的な手続の流れを整理したものです。登録・変更・廃業等の届出に必要な書類、標準処理期間、審査の運用は登録行政庁により異なります。登録手続の詳細は登録行政庁(国土交通省または都道府県)にご確認ください。契約上の法的論点は弁護士にご確認ください。

まとめ

鑑定業者登録は法人格に紐づくため、株式譲渡なら維持され、事業譲渡・合併なら買い手側の登録手続と売り手側の廃業等の届出が必要です。要点は次の3つです。

  • 株式譲渡は登録継続+変更の届出、事業譲渡・合併は買い手の新規登録または事務所追加+売り手の廃業等の届出(第29条)
  • 事務所が2以上の都道府県にまたがる場合は大臣登録への登録替えが必要で、その期間をスケジュールに織り込む
  • 空白期間を作らないため「買い手の登録完了 → 譲渡実行 → 廃業届」の順序を守り、専任の不動産鑑定士(第35条)の残留を最優先で設計する

登録の承継設計は、鑑定業法の実務と M&A の手続を両方知らなければ組み立てられません。当社は不動産鑑定士が直接、登録面の段取りを含めて売却・買収をご一緒に設計します。オーナー鑑定士様、鑑定機能の取得をご検討の企業様、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。無料相談はこちら。M&Aの全体の流れは M&Aの流れ、買収をご検討の方は 買収・買収ニーズ登録 をご覧ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する助言ではありません。記載の価格・相場は目安であり、実際の譲渡価額は個別の交渉により決まります。税務・法務の具体的な判断は、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
吉田 健人

執筆者

吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士

外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。

不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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