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マッチングサイトで鑑定会社は見つかるのか?案件の探し方と、最初の接触でやってはいけない5つのこと

M&Aマッチングサイトで鑑定会社の売り案件は見つかるのか。業種分類に「不動産鑑定業」が無い現実とフリーワード検索の使い方、ノンネーム情報から読むべき「売上の中身」と鑑定士の人数、そして初回接触でやってはいけない5つのことを不動産鑑定士が整理します。

「鑑定会社を買いたい。M&Aのマッチングサイトに登録して案件を探してみたが、鑑定事務所の売り案件がまったく出てこない」。買い手側のあなたから、この相談を受けることが増えています。

マッチングサイトは、費用を抑えて数多くの案件に触れられる優れた仕組みです。案件数が多い業種では、掲載情報を眺めるだけでも相場観が養われます。しかし鑑定業に限っては、サイトの構造と業界の性格が噛み合わず、探し方を知らないまま登録しても手応えが得られにくいのが実情です。

そして、ようやく見つけた1件に最初のメッセージを送る場面は想像以上に重要です。鑑定業界は狭く、売り手は「検討していること自体が漏れること」を最も恐れています。最初の一通で警戒された案件は、その後どれだけ条件を積んでも前に進みません。不動産鑑定士として、案件がどう出ているのか、ノンネーム情報から何を読み取るべきか、初回接触で避けるべき5つの振る舞いを整理します。

マッチングサイトに鑑定会社の案件は出ているのか

業種分類に「不動産鑑定業」という区分がない

最初につまずくのは検索の入口です。主要なマッチングサイトの不動産カテゴリの小分類は「不動産開発・売買」「収益不動産」「賃貸不動産管理・仲介」「分譲マンション管理」「その他不動産関連事業」などで構成されています(バトンズの不動産カテゴリ小分類、2026年9月時点)。ここに「不動産鑑定業」という独立した区分はありません。

つまり鑑定事務所が掲載されるとき、多くは「その他不動産関連事業」か士業・専門サービスの区分に入ります。カテゴリ検索ではなくフリーワード検索で「鑑定」「不動産鑑定士」「地価公示」を当て、業種横断で拾う。これが実務的な探し方です。

案件の母数そのものが小さい

分類の問題を解いても、母数の壁が残ります。国土交通省「不動産の鑑定評価に係る登録状況」によれば、令和7年1月1日現在の不動産鑑定業者の登録数は3,398業者で、飲食業や建設業とは桁が違います。

しかもその多くは代表1名の個人事務所か少人数の法人で、廃業を選ぶ規模の事務所はM&Aの検討対象として意識されないまま店を閉じることが少なくありません。母数が小さく、売却に至る割合も低いのです。

守秘を重視する売り手は公開の場を避ける

もう一つの理由は守秘です。「鑑定士2名・年商4,000万円・関東地方」というノンネーム情報でも、その地域の同業者が読めば数社に絞り込めてしまいます。

売り手にとって、公開の場に情報を出す行為はそれ自体がリスクです。職員の離職、依頼者の様子見、同業からの詮索。だからこそ守秘を重視する売り手は、仲介会社や士業の紹介という非公開ルートを選びます(鑑定会社の売却は誰に相談すべきか)。「公開されている案件は母集団の一部にすぎない」と理解することが出発点です。

プラットフォーム型と仲介型では、届く情報量が違う

掲載情報はノンネームで止まる

マッチングサイトに並ぶのは、社名を特定できない範囲に加工したノンネーム情報(譲渡対象を特定させないよう業種・地域・規模を抽象化した概要)です。売上、営業利益のレンジ、従業員数、譲渡希望価格、譲渡理由。ここで止まります。

仲介会社やFAを通じた案件では、NDA(秘密保持契約)締結後に企業概要書が提供され、決算書3期分、売上内訳、主要取引先、職員の在籍状況まで確認できます。同じ「情報開示」でも解像度が違います(売却を誰にも知られずに進める方法)。

プラットフォーマーはM&A支援機関登録の対象外

中小企業庁のM&A支援機関登録制度では、マッチングサイトの提供のみを行う事業者(M&Aプラットフォーマー)は本登録の対象ではないとされています。登録FA・仲介業者が中小M&Aガイドラインの遵守宣言を求められるのに対し、プラットフォームの提供者はその枠組みの外にいます。

ただし、プラットフォーマーが仲介・FAと同様の業務を行う場合にはガイドラインが適用されます。また中小M&Aガイドライン(第3版)は、プラットフォーマーに対し譲受側の調査をプラットフォーム登録前にも行い、反社会的勢力への該当性や過去のM&A関連トラブルの有無の確認を含めることを求めています。

「サイトが確認している」と「自分で確認する」を混同しない

登録前審査は登録者の適格性チェックです。掲載された財務情報の正確性や、鑑定業者登録・専任の不動産鑑定士の在籍状況を保証するものではありません。数字の裏取りは買い手の責任として残ります。

費用が低いことの裏返し

買い手側は基本無料で閲覧でき、成約時に一定料率のシステム利用料を負担する構成が一般的です。費用が低いことの裏返しは、探索・審査・条件交渉・クロージングを自分で担うということです。鑑定業ではここに「鑑定業者登録をどう承継するか」「専任の不動産鑑定士を確保できるか」が加わります。一般的なM&Aの知識では埋まらない領域なので、鑑定業の制度に明るい専門家を別に確保してください。

ノンネーム情報から何を読み取るか

第1に「売上の中身」、第2に「売上の額」

鑑定事務所の売上は、公的評価(地価公示・固定資産税標準宅地・競売評価など)、金融機関の担保評価、民間依頼で性質がまったく違います。内訳が書かれていれば、そこが最重要の情報です。

ノンネームの記載読み取れること確認すべき点
公的評価の比率が高い安定的だが個人帰属の可能性誰に委嘱・選任されているか
金融機関の担保評価が主反復発注で安定、単価は低め取引先の集中度と単価
民間依頼が主単価は高いが代表個人への依存代表引退後に残る割合

公的評価の枠は会社ではなく鑑定士個人に委嘱・選任されるため、買収しても自動的に付いてきません。売上3,000万円のうち1,500万円が公的評価という案件は、代表が引退すれば相当部分が消えます。額面の売上だけで比較すると、この差を見落とします。

鑑定士の人数と年齢構成

次に見るのは人です。国土交通省「不動産鑑定士の担い手確保に向けて〜論点整理」(令和7年3月)によれば、鑑定士の年齢構成は40〜60歳代が74%を占め、30歳代以下はわずか7%です。鑑定業者に所属する鑑定士等は平成23年の5,057名から令和6年には4,496名へ減り、知事登録業者では減少率が13%に達します。

したがって「鑑定士1名(代表のみ)」という案件は、代表が抜けた瞬間に専任の不動産鑑定士が不在になります。買い手側に配置できる鑑定士がいなければ、その事務所は買っても動きません。逆に「代表以外に鑑定士1〜2名が在籍」なら検討の優先度は上がります。人数の記載がない場合は最初の質問に含めてください。

譲渡理由と希望スキーム

譲渡理由は、交渉に使える時間の長さを示します。健康上の理由なら期限が短く、「後継者不在」だけなら数年かけた並走も設計できます。希望スキームも実務の重さを左右し、株式譲渡なら鑑定業者登録が存続して変更登録で足りますが、事業譲渡なら買い手側で登録の手当てが必要です。個人事務所は株式がないため事業譲渡しか選べません。

最初の接触でやってはいけない5つのこと

マッチングサイト経由の打診は、売り手から見れば「どこの誰かわからない相手からのメッセージ」です。以下の5つは一通で信用を失います。

1. 相手を特定した推測を書く

「もしかして◯◯県の△△事務所の先生ではないですか」。悪気のない確認でも、売り手にとっては最悪の一言です。匿名で出した情報が既に読み解かれていると知れば、検討自体を取り下げる可能性があります。特定できたかどうかは口にしない。狭い業界での作法です。

2. いきなり価格を値切る

最初のメッセージで「希望価格は高すぎる」と書くのは、交渉ではなく門前払いを招きます。売り手が最初に判断しているのは金額ではなく「この相手に情報を渡して大丈夫か」です。価格の話は決算書と実態を見てから始めてください。

3. NDA締結前に社内外へ情報を回す

「顧問税理士に見てもらいます」「同業の知人に意見を聞きます」。この二つが最も漏れる経路で、とくに同業の鑑定士への相談は地域が近ければほぼ特定されます。相談が必要なら、誰に何を共有するかをNDAの許容範囲として先に取り決めてください。

4. 数十件に同じ文面を一斉送信する

母数が小さい業界では、一斉打診はすぐに知られます。「誰にでも同じ文面を送っている」と伝われば、以後どの案件でも優先順位を落とされます。件数より、1件ごとに読み込んだ質問を作るほうが早いのです。

5. 鑑定業特有の要件を後回しにする

財務と価格の話が先に進み、デューデリジェンス(買収前に対象会社の実態を調査すること)の段階で「専任の不動産鑑定士を配置できない」と判明して白紙に戻る。これが最も避けたい展開です。要件は鑑定士でなくても鑑定会社は買えるのかで整理しています。充足見込みは初回接触の段階で自分側の答えを持っておいてください。

初回メッセージに入れる3つ

自己紹介(何者で、なぜ鑑定会社を買いたいのか)、譲渡後の方針(屋号・職員・依頼者をどう扱うか)、守秘の姿勢(誰にも共有せず、NDA締結後に詳細を伺う意思)。この3つを簡潔に書くだけで返信率は変わります。

質問は3段階に分ける

聞きたいことを一度に並べると、売り手は「答えたら特定される」と感じます。段階を分けてください。

段階聞くこと聞かないこと
初回(NDA前)鑑定士の人数、希望スキーム、想定時期事務所名、所在地の詳細、取引先名
NDA後決算書3期分、売上内訳、職員の在籍状況依頼者ごとの単価の詳細
基本合意後個別契約の条項、公的評価の委嘱状況—

想定されるケース:1年探して何が残るか

1年間の探索で残るもの

想定されるケースとして、鑑定士1名を擁する買い手法人が、隣県の鑑定事務所の買収を目指してプラットフォーム型で1年間探索する場面を考えます。数値は例示です。

  • マッチングサイト2社に登録し、フリーワード検索で毎週確認
  • 1年間で鑑定関連と判断できた掲載案件:5件
  • そのうち専任鑑定士の残留が見込めた案件:1件
  • 打診から基本合意までに要した期間:4か月

金銭的負担はほぼ発生しません。実質的な支出は、毎週の検索と5件の読み込み・打診に費やす代表の時間、そして「1年待った」という時間です。

仲介を併用した場合の費用感

当社の手数料は完全成功報酬で、着手金・中間金はいただきません。譲渡価額2,000万円以下は一律150万円(税別)、2,000万円超1億円以下の部分は7%です(手数料ページ)。譲渡価額1,800万円なら手数料は150万円(税別)で、買収後の年間営業利益が400万円なら、対価と手数料の合計1,950万円は約5年分の利益に相当します。成約しなければ費用は発生しません。なお買収対価・のれん・仲介手数料の税務上の取扱いは税理士に、契約条項については弁護士にご確認ください。

プラットフォーム型は相場観を養う用途で有効です。しかし鑑定業の案件の多くは非公開ルートを流れます。片方だけに賭けず、公開情報は自分で追いながら非公開の母集団にも手を伸ばす。これが1年を無駄にしない進め方だと断言します(M&Aの流れ)。

まとめ

マッチングサイトで鑑定会社を見つけることは可能ですが、業種分類に「不動産鑑定業」はなく、母数も小さく、守秘を重視する売り手は公開の場を避けます。掲載案件は母集団の一部にすぎないと前提を置き、ノンネームからは「売上の額」より「売上の中身」と「鑑定士の人数・年齢」を先に読む。そして最初の一通で相手を特定しにいかない。この3点が分かれ目になります。

要点を振り返ります。

  • 業種分類に「不動産鑑定業」はなく、フリーワード検索で業種横断に拾う
  • 不動産鑑定業者の登録数は3,398業者(令和7年1月1日現在、国土交通省)で母数自体が小さい
  • マッチングサイトの提供のみを行うプラットフォーマーはM&A支援機関登録の対象外。掲載情報の裏取りは買い手の責任
  • ノンネームは「売上の中身」(公的評価・担保評価・民間依頼の比率)と「鑑定士の人数・年齢」から読む
  • 初回接触の禁じ手は、相手の特定、いきなりの値切り、NDA前の口外、一斉送信、業種要件の後回し
  • 質問はNDA前・NDA後・基本合意後の3段階に分け、公開ルートと非公開ルートを併用する

鑑定会社の買収を検討している経営者のあなた、鑑定機能を取り込みたい企業のあなたへ。案件が見つからないのは探し方の問題と、そもそも公開されていない場合の両方があります。私たちは鑑定会社に特化したM&A仲介として、買収ニーズの登録から候補先の探索、条件整理までを支援します。プラットフォームで見つけた案件の見極めもご相談ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する助言ではありません。記載の価格・相場は目安であり、実際の譲渡価額は個別の交渉により決まります。税務・法務の具体的な判断は、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。

鑑定業者の登録や専任の不動産鑑定士、公的評価の扱いまで含めた承継の全体像は鑑定会社のM&A・事業承継のページでまとめています。

吉田 健人

執筆者

吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士

外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。

不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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